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東洋的心気体づくり

錬丹養生法  (気弱な日本人活性化計画)

錬丹養生法  (気弱な日本人活性化計画)

艮治崙森

 

はじめに

人に優しく地球に優しくありたいものですが、体に余力がないと、なかなかできないものです。今の世の中、新しいこと、物、情報を追い求める文化が主流で、大抵、外に意識が向かっています。むしろ自分の心と体や、身のまわりに意識を向ける文化になれば、いろいろな摩擦や軋轢はなくなっていくのではないでしょうか  人は生きていれば、いいこともあれば、嫌なこともあります。いろいろなことに翻弄され、心身を疲れさせてしまいがちです。そこで提案したいのは、二つの道を同時に歩むことです。一つは普通に生活、仕事をして喜怒哀楽を感じている人生。もう一つは自分のエネルギーを感じ、それをしっかりさせて、そこから感じる何かを楽しむ人生です。

私は、鍼灸マッサージの仕事をしています。この経験から最近特に感じることは、エネルギーがもれているような状態の方が多いということです。仕事量の増加や人間関係のストレスによるものが原因と思われますが、ストレス過剰の社会状況に心身がついていけなくなっているようです。

ちまたには色々な教室や道場がありますが、あなたは納得ゆくものを身につけられたでしょうか。私自身の経験では、良い状態に行き着くまでに時間がかかります。あちこちに足を運びましたが、良い教室や先生がみつかっても、それなりに氣力、体力が必要です。他の人と競争することもあるでしょう。本書ではできるだけ短期間で心身の改善を自覚できるような方法をご紹介いたします。

私は運よく、日本のみならず、台湾、中国で、治療、氣功、武術の名人にお会いして、教えていただくことができました。その中には、氣血を養い五臓(特に腎)を養う、大変すぐれた養生法があります。  武術の世界は、強い人がさらに強さを求めるケースが多いです。お年寄りや弱い人は、なかなか寄りつけません。しかし武術の中の養生法、基本功は、実に多くの人を益するものであると思います。

健康の為に型のある運動を習いにいっても型を覚えられないとか、逆に肩がこってしまったなどと言っているのをよく耳にします。本書では水がよく流れるパイプのような通りの良い体づくりからスタートしたいと思います。

氣持ちよく体のエネルギーを感じながら、自分の体と心が、今、何をしているのかがよく見えてくると、とても落ち着いてきます。その場が、心地よい空間になります。普段、氣づかないことにも、氣づくかもしれません。

「心は安定、体は強靭に」

 

進歩のしかたは

1 感覚をつかむ。例えば、氣や、沈む感覚など。

2 功力が出てくる。例えば、打つ、つかむ力など。

3 体が変化する。つまり、骨格が広がる、体の密度が濃くなる感じ。

という流れを自ら理解できるでしょう。

 

はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P1

目次 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P2

経緯 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P3

解説 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P4

 

一段目  練功の進め方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P4

1 生活術

2 バランスチェック 五臓と感情との関係

一人按摩 Uの字回旋運動 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P5

自分のスイッチをみつける 立ち方確認

氣持ち良さに乗る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P6

3 五臓を養う 背骨うねり 押し手  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P7

4 上げ手 推手  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P8

 

二段目  基本練功 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P8

5 沈身 大木 払い手

6 伸縮 アメーバ 足裏の観察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P9

7 内観 色受想行識 感情の安定=円満・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P9

白隠禅師の言葉  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P10

今、ここ、ただ、ある 一瞬一秒未知と向き合う

腎、命門、丹田に手を向ける

 

三段目  要訣 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P11

8 エネルギー充実 球体キープ まとまり感

軽く動ける エネルギーの円満

9 時間 踵呼吸 星の生成の様  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P13

終わりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P14

追記 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P15

 

この養生法は、ほぼ一人練習です。心臓に負担をかけず五臓(特に腎)を養い内力を引き出します。運動の回数は大体で、体が温かくなるまで行うと氣血が全身にめぐります。

形はこだわらず、体内の観察が大事です。丹田や体軸の感覚をつかみます。無駄な力を抜き重心を沈めます。心地よさを求めます。場所と時の制約をうけない運動です。

あわただしい世の中、水鳥のように、水の下の足はバタバタ動いていても、水の上の体はスイスイと優雅であるようになりましょう。

上げ手、推手など行えばさらに進歩が確認できます。(丹田、沈身のできた人との手合せ)

養生法には1回の説明で済むものと、長く練習するものがあります。これらを覚えて身につけて、いい感じ(感覚をつかみ、功力が出てくる等)になったら終了です。

 

経緯

解説する前に、私がこのような方法を探るに至った経緯を述べさせてください。

私の小中学生時代は、背が低い方でした。運動は好きでしたが体力は弱いし、球技等は下手でした。幼馴染に体力的に強い子がいて、大体、庇護されていたのですが、中学3年の時、トイレで数人に脅され蹴飛ばされました。なぜなら、同じクラスの美人の女の子を呼び出して来いと言われたのに対し、私は「自分で行け」と言ったからです。この時は一方的にやられて悔しかったです。自分の非力を情けなく思った私は、その日から強くなるため、いろいろなことをし始めました。自分の額の高さほどの蛍光灯のひもを回し蹴りすることからスタートし、強くなること、能力を高めることが私のテーマになりました。それから様々なスポーツ、ヨガ、禅、氣功、武術等に親しみました。

ある武術の先生は、全身エネルギーが満ちていて拳で打つと、こちらの方が痛い程でした。しかし手足を硬い物に打ちつけるような練習はせず、内臓を養い氣血を全身にめぐらし、一つ一つの細胞を充実、強化した結果そのような体になっていました。当時81歳の先生は、お顔の血色は良く目はきらきらしていました。また凄く健脚でした。ところが、昔の写真を見せていただいたら30代には胃を病み、やせてげっそりしていました。日々の錬功(内功)で、このように体が変化していったということでした。「合理的(東洋医学的)で、心臓に負担をかけずに出来、元氣が出てくる。年をとってもできるし衰えない。人を打つより世界と向き合うようになる。」と先生は言っておられました。今は道教の修行をしているそうです。私は先生の人柄、生き方にしびれてしまいました。練習しているうちに、本当に強い人には技は通じず、むしろ体作りが大事ということを思い知らされました。体が変わると意識も変わるようです。徐々に武術の闘う面には興味がなくなり養生面や意識の変化に関心が移っていきました。

先生方は細かい説明をしませんでした。「自分でつかむもの」だと言うのです。昔の先生方は、だいだいそうです。自分で考え、自分で体得するものという考えでした。いい質問をすると、いい答えが返ってきました。ここまでになるには、ずいぶん時間がかかっています。ポイントは感覚をつかむことなのです。そうするといろいろわかり始めます。

平成7~23年、病院のリハビリ室勤務、ホリスティック医療の病院勤務、鍼灸院、整骨院勤務、スポーツクラブ勤務等、鍼灸・按摩・マッサージ・指圧師の資格で働けるところは、ほぼ経験しました。

2番目の病院勤務時代、自分より若い患者さんが、難病やがんに苦しみ、亡くなっていくという現実を体験しました。現代医学、東洋医学、様々な治療法をしても救えない人はいます。当時、私は30代後半、30代半ばの女性が小さな子供を残して亡くなってしまったのが最もこたえました。一番若い患者さんは14歳、白血病や悪性リンパ腫でした。今、私は予防医学、養生が大事とつくづく感じています。

平成23年4月~現在 病院勤務時代の同僚と再会し共同運営しています。

治療で、お客様の体の状態がよくなり喜ぶ顔を見たい。それにプラスして、弱い人が丈夫になっていく過程を見たい。東洋思想を知っていただき病気を未然に防げるようになっていただきたいと思って日々仕事をしております。

それでは養生法の具体的な方法をお伝えいたします。

 

解説

一段目  練功の進め方

 

1 生活術・・・運動は激しく行う必要はありませんが、背中がほかほかと温かくなる程度行うと全身に血液がめぐり、運動の効果が出てきます。  自分のエネルギーと共にあると氣持ちいいものです。それに(今に)ひたることが大事です。

温泉に入っているように立っているだけで快い、ただ居るだけで心地よい、を目指しましょう。

養生法は生活術です。体から病を取り去る道であり氣質を変える道です。総じて心身の観察に尽きます。自分の心と体の弱いところや病を抜き去り全身に氣血をめぐらせ、一つ一つの細胞を充実させ内臓の状態を良くし体を丈夫にしていきます。

目標は高く空間や地球とつながることです。だから些細なことは氣にせず前進です。そうしているうちに元氣が出てきて氣持ちよくなり些細なことは氣にならなくなります。いつのまにか、健康、護身、心の安定が得られます。まさに一石三鳥です。

私の経験では激しい練習より、地道によく心身を観察しつつ行う練習が効果的でした。すべて私が体験したことですので、私が出来たところまでは、お伝えできます。

是非、生活や仕事の中で生かしていただきたいと思います。

 

2 バランスチェック・・・目をつぶって両手をあげてみましょう。大抵、左右の高さが違っています。低い方の背中を注意深く触れていきますと、硬いところや張っているところがみつかります。そこが左右のアンバランスの原因です。ストレッチや運動を行う時そこを意識して、伸ばしたりほぐしたりして下さい。骨盤の左右の高さの違いや背骨のずれは、筋肉の緊張などで引っ張られておきています。筋肉の緊張は、過度の運動、疲労以外にも内臓の疲れでもおきます。

 

肝~怒り、目の使いすぎ、飲酒

心~喜び過ぎ、忙しい

胃~思い悩む、偏食

肺~悲しみ、タバコ

腎~恐れ、不安、長時間労働 など。

 

背中はその方の履歴書ともいえましょう。背中をよく認識してご自分の体の癖を把握していれば、不測の事態をさけることもできましょう。

 

一人按摩・・・立位で腕ふり体回旋運動、座位でUの字回旋運動する時、体の癖や背骨、内臓を意識して、体を自分でマッサージするように行ってみてください。背中が温かくなるまで行うと効果的です。血液がめぐり、細胞が新陳代謝しています。この運動は小さなお子様を持つお母さんでも「これなら出来る」と喜ばれました。  Uの字回旋運動・・・あぐらでも、椅子に座っていても良く、そして体を前から見てUの字に回旋運動します。まず右にJの字様に背骨をたわませ、次に前方に同じように背骨をたわませ、次に左、次に後方にと回していきます。そうすると前から見てUの字に回旋運動しています。繰り返し回します。スピード、大きさは、自分が楽に出来るように。つられて背骨がまんべんなく動きます。内臓もまんべんなく動きます。左右同数、疲れない程度にして、血液を流すことが目的です。背中がほかほか温かく感じてきたらうまく出来ています。暇があれば、ちょくちょく行ってみてください。テレビを見ながらでもOKです。

 

自分のスイッチをみつける・・・皆さんが今まで行った運動やこれから紹介する運動の中で、氣分を変えたり、エネルギーの感覚をつかみやすいものを「スイッチ」と呼んでいます。いつでもどこでも速やかにいい状態にするスイッチを身につけましょう。

 

立ち方の確認・・・足を肩幅位にして膝とソケイ部をゆるめて、足の裏に骨盤が乗っているのを確認して、頭のてっぺんから十円を落とすと、おしりの穴からチャリンと落っこちるような姿勢をとります。いかがでしょうか、体がしゃんとしましたか。腰のS字カーブをまっすぐにして、胸をゆるめ、脇を少し開き氣味にして、できるだけ全身の筋肉の緊張がなく、氣血の流れが良い姿勢をとると立禅の姿勢です。手は下に下げた形でも、腕を円筒形にして手のひらを丹田の方に向けた形でも良いです。

 

氣持ち良さに乗る・・・ストレッチなどする際、氣持ちいい程度に伸ばし、あまり脳に痛い刺激を入れないようにします。痛い刺激を入れると筋肉が収縮してしまいます。氣持ちいい刺激を入れ、体の反応を見ます。筋肉はゆるみ、血行は良くなり、細胞は新陳代謝します。そして体は回復して、丈夫になる方向へ向かいます。猫を見ると、とても参考になります。猫は氣持ちいいことばかりしています。

 

手も足もピンと伸ばすと緊張します。90度に曲げると、やはり緊張します。できるだけ緊張のない角度にしましょう。大体、円形になると思います。脇をしめずにゆったりさせ、すべての関節をゆるめてニュートラルな状態にします。要は、氣血がよく流れれば良いのです。運動はきつくやる必要はありませんが、背中が温かく感じる程度まで行うと、全身に温かい血液が流れます。これを継続していると体の調子はよくなり、実際に自分で体の変化が感じられるようになります。

 

体の通りがよく血液がよく流れていると、細胞は新陳代謝し成長発達していきます。

あれこれ覚えるより単純な運動を長く行う方が、早く功力がつき体質も変化します。急ぐ必要もなく心臓に負担をかけずに、無理なく体質改善できます。体質が変わった時、氣質も変化しています。

単純な運動を長く行っていると、ランナーズハイのような氣持ちよさが出てきます。

それに乗ってしまいましょう。これが身につけるコツです。シンプルな運動を長く行っていると氣持ちよくなって、今度はやめられなくなったりします。

この時、脳内では、エンドルフィンなどが分泌され脳細胞は活性化します。

 

立禅を行うときは温泉につかっているように行いましょう。自分を疲れさせないことが大事です。

人の体は皮袋のようで70パーセントは水です。それを感じるようにしましょう。

筋肉は多少使いますが、できるだけ使わず、緊張させず体内を水が動くようにイメージしましょう。

動きにくいところや、つまっているところや、痛むところから息を吐くイメージで体を緩めましょう。

 

3 五臓を養う・・・体回旋運動をする時、内臓に刺激が行くようにしましょう。腕を高めに動かせば、肺や心臓に刺激が入り、横に大きく振れば、肝臓や胃に、低く行えば、腎臓に刺激が行きます。五臓を養うように、マッサージするように行いましょう。内臓をねらって伸縮、ねじりを入れれば良いのです。体をねじると氣持ちよく筋肉が伸びます。そして伸びた筋肉がゆるむ時、血液がよく流れます。体をよく観察して氣持ちよさや、体があたたかくなるのを感じてください。次に体の動きを静めてゆき、そのまま、ゆったり動いていてもいいし、立禅、座禅になってもいいです。

 

立ち方を確認して左右の足に体重を、ゆっくり交互に移動させます。イメージを少し使い、水が右の足から、お腹を通って左の足へ、左の足から右の足へ、これをゆっくり繰り返します。波のような感覚が出てきたらそれを楽しんで、ゆったり立つか、ゆっくり歩きましょう。

背骨うねり・・・立ち方を確認して、足を肩幅位にして、膝とソケイ部をゆるめます。腕を、お腹の前にボールを抱えているようにして、前方向に円運動させながら、背骨をうねらせます。この運動は、体の通りを良くする運動です。背骨や内臓を満遍なく動かし氣血を流します。最初は大きめに動かし、徐々に小さく動かします。ポイントは尾骶骨から背骨1つ1つ意識しながら動かすことです。

 

押し手・・・片足を半歩前にして、足から腰、背中、腕とエネルギーを通して、手を胸の前位に上げ、前方の空間を押します。腕は、肘を伸ばしきらないように、ほとんど動かさず、足の前後の重心移動をゆっくり波のリズムで押したり戻したりします。実際に空間の重さを感じるように。

時々、左右の足を変えます。行う時間は長いほど良いですが、無理なく、氣持ちよい範囲でしましょう。体内のエネルギーの流れが感じられてくると、氣持ちよいので、自然に長くなっていきます。

 

4 私は子供のころから、いろいろな運動をしてきました。剣道、柔道、サッカー、空手、キックボクシング、ここまでやると、才能、スピード、体重、身長、その壁に悩みました。それから、スキー、サーフィンなど、自然相手のスポーツをやりました。海外放浪して中国で太極拳を見て、推手で、お年寄りが若い人に勝ったり、若い女性が男の人に勝ったりするのを見て、これはおもしろいと思いました。推手はバランスのくずしあいっこです。推手をやると、相手の体の硬軟、強弱等がわかります。武術をやっているうち、本当に強い人と対すると、技は何ひとつ通用せず、体作りの方が大事なことに気づきます。名人達人は、体の密度が濃い感じでした。

 

上げ手・・・相手の両手首をつかみ押さえます。相手はその状態から手を上げます。腕の筋肉を緊張させず、丹田から力を出し手を上げます。これで丹田が出来ているかわかります。

推手・・・立ち方確認して、二人で、お互いに半歩片足前にして、前の手の甲側を合わせ、お互いに腕で円を描きながらバランスの崩し合いをします。この時、膝やソケイ部はゆるめ、中心軸を意識して、肩や腕は力まず腕は伸ばしきらず丸みを保ち、体を空気圧のあるボールのようにしましょう。今まで説明した体の状態が出来ているほど強くなってきます。

このようにして氣血の通りを良くし伸縮の幅を広げられると、無駄な力が抜けるようになります。軸がしっかりし安定してきます。

 

二段目  基本練功

 

5 沈身・・・立ち方を確認して、膝とソケイ部をゆるめて尾骶骨を丸めぎみにすると腰がまっすぐになり、胸は張らず楽に、背中の通りがよくなり、足の力が体幹を通って腕に伝わります。押されてもどっしりしてきます。上半身の緊張が抜ければ抜けるほど、体の通りがよくなるにつれて地面の力が使えるようになります。

 

大木・・・今はストレス社会、忙しすぎて、つい攻撃的になったり攻撃されたりします。攻められると、自分のエネルギーが欠けるような、しぼむような感じがします。そこでさらに「自分が悪い」と、自分を責めてしまうと、自分が最大の敵になってしまい、ますます自分の首をしめることになり、思い悩めば胃の裏が硬くなったりします。そこで、おすすめするのは大木のイメージです。大木になり大地に深く根を張り、天地とつながるように、大きく枝を広げて光のエネルギーを吸収します。氣功と組み合わせると、さらに効果的です。手のひらをこすりあわせ、1センチほど離すと自分のエネルギーを感じます。それを膨らませたり縮めたりして感覚を強めたら、手のひらを下に向け、上下させ、イメージを使い足下、頭上に広げ、あとは体と手の動きは自由にします。体はパイプのように中空にして上下からのエネルギーの流れを感じていき、この状態を保つようにします。目標は地球との同調です。

 

誰もが一呼吸毎、死に近づいています。一呼吸一呼吸を大事にしたいものです。吐く息毎に緩めましょう。沈んで地球とつながるような感じで。

体回旋運動をする時、体の詰まり、滞りを取り、パイプのように、水(氣)がよく流れるようにします。さらに、沈む感覚を加えて、長い時間行うと、氣持ち良くなってきます。

払い手・・・気が上がってパニックになったり、人前であがってしまいやすい方に特に効果があります。ゆったり立って、左足半歩前、イメージの相手の突きを、左手で円を描きながら払い、右手で相手を押す時、押すと同時に、身体は斜め45度に沈むように。呼吸は自然に。無駄な筋肉の緊張を取り除いて。相手は腕の力で押した時より、強く押される感じがするでしょう。数回繰り返したら、反対側も行って下さい。これを行うと、氣が沈んできます。安定感も出てきます。何回も繰り返して、感じをつかんで下さい。

 

6 伸縮・・・リストラが進む一方で、残った方々の仕事量は増える一方の昨今です。パソコン作業が連日、10時間以上も続くと、首・肩・背中がパンパンになったり、体の許容量を超えて仕事をしている為、腎虚になり、腰痛になったり、体が重だるくなったりします。休むことが必要でも休めない状況の方が多いです。運動が体にいいとわかっていても、運動する時間がとれない方が多いのです。仕事をしながら体をうまく使い、仕事をしながら、頭をうまく使うしかないのでは、と私は思うのです。

一例、歩いている時や立っている時は、重心移動しながら波を感じ、座っている時は、呼吸による、お腹の伸縮で波を感じるようにしてみましょう。波は「自然」に通じます。

 

アメーバ・・・体の硬い方は、腕ふりや体回旋運動を行い体が暖かくなってから、呼吸によって、お腹がふくらんだり、ちぢんだりしているのを観察します。手をお腹の前でボールを抱えているような形にします。ボールは、お腹と共に伸縮しています。伸縮に時間が加わると、「波」です。波の感覚を感じられると氣持ちよくなってきます。イメージと手を使い、ボールをだんだん大きくして、体がすっぽり入る大きさになったら、ボールの中を、自分の好きな色の光で満たして、その中で、私たちの体がアメーバかクラゲ(海月、水母)のような、原始的な生命体に戻ったとイメージしてみましょう。ふくらんだり、ちぢんだり、波にただよいながら、周囲の空間と交流してみて下さい。「周囲の良いエネルギーを吸収している」と、イメージしてみて下さい。波と圧力が、なんとなく感じられると良いです。すべては円環。自然への回帰を目指しましょう。

 

誰もが、じっと真っ直ぐなど立っていられません。微妙に体重移動を常にしていて脳が体をコントロールしています。足の裏の今どこに圧がかかっているか観察してみて下さい。足の裏をよく感じようとするとムズムズした感じがします。そして体重を左右に交互に移動させていると、波のような感覚が出てきて面白いです。それを体感してください。

 

7 内観・・・五行の中で母親的存在は水です。五臓では腎です。腎は母親から受け継いだ先天の精を宿す所で重要です。腎、丹田をしっかり養うと、自動的に、水木火土金の順に良くなっていくようです。

腎–> 肝–> 心–> 脾胃–> 肺

逆に、心身を酷使すると、関連する臓器は疲れます。また、内臓の状態は、体表にあらわれます。

内臓と感情は密接な関係があります。体質がかわると氣質も変わります。すぐ怒り、不安、恐れにゆさぶられていたのが、だんだん穏やかになってきます。

心と体(色受想行識)が、今、何をやっているか、よく観察しましょう。

色・・・肉体。周囲のもの。

受・・・感覚(見る、聞く、匂う、味わう、触れる)

想・・・思う。イメージ。

行・・・~したい。欲。

識・・・記憶。

よくよく、自分のしていることを観察してみれば、色や受に意識が向いていたり、想、行、識に意識が向いていたりして、常に止まっていないで、ぐるぐる廻っています。無常です。

より細かく観察して感覚の幅を広げていくと、いろいろ氣づくこともあるでしょう。

どこに私がいるのか。原始仏教では「無我」であり、私と呼べるものは、どこにもいないと説いています。ヒンドゥ教では、傍観者である「真我」が自分を観察していると説いています。

心は次々に何かを意識しますが、その間には時間があります。心はよくよく見れば隙間だらけです。

呼吸(お腹のふくらみ、ちぢみ)を感じつつ、そして、入力(目、耳などから入ってくる情報)に、過剰に反応せず、出力(話す、行動するなど)は、注意深く選べば、エネルギーを無駄に失わずにすみ、体調をキープできます。感情の安定は、円満につながります。

 

以下は、白隠禅師の言葉です。

「おもうに、人間には五漏といって、五つの無益な漏出がある。すなわち、眼、耳、鼻、舌、身の五官の浪費であり、色、声、香、味、触の欲望であり、人間の性力を漏らす五欲の穴であり、この五欲に意欲をくわえた六欲の執着を一切捨て去り、小智才覚をもはなち、あらゆる思いわずらいをはらい、生まれるときもらってきた、ただ一つの本然の性である生の一念となって、五官が外面的作用を停止してしまったときにこそ、人間本来の性、本然の生氣は、脈々と内に働きだし、真氣は彷彿として身心にみちてくるのである。」

「それ、真の長生不死の神丹はそとから得られるものではない。なんじに、もとからそなわった本然の性徳をおさめ、なんじが本源の生氣をまもり散らさず、眼はみだりに見ず、耳はみだりに聞かず、口はみだりに言わず、身体はみだりに動かさず、心はみだりにうごかさず、真一の生氣を臍の周囲から下腹のあいだに集め養うときは、渾然として元氣専一そのものになる。これこそ丹を練るということである」

要は、五感を忙しく働かせず、丹田に氣を集め養うですね。

 

今、ここ、ただ、ある。一瞬一秒、未知と向きあっています。誰もが意識する、しないにかかわらず、未知と向きあっています。次の瞬間、命を取られてしまうかも知れません。

命は有限です。自分のエネルギーを無駄に損なわないで、自分と世界を、より深く知りたいものです。

 

手のひらをこすりあわせ1センチほど離すと、自分のエネルギーを感じます。

それを膨らませたり縮めたりして感覚を強めたら、手のひらを腎・命門・丹田に向け、ボールを抱えている形で温養します。

その手を少し膨らませたり縮めたりします。その時、腎・命門・丹田も、イメージで少し膨らませたり縮めたりします。

 

体回旋運動を行うとき、腎と手先を繋ぐ感じで行います。そして体内の感覚、反応を観察し感じます。

筋肉だけで行うより力が入るでしょう。実際、感じが変わってきます。長くやっていると、体も変化し、充実してきます。力んだり速くやる必要はありません。楽しく気持ちよく、できる範囲で行ってください。

 

手を広げて胸を開いたり閉じたりする(開合)運動の時、肺を意識して開いたり閉じたりして下さい。手を横に出す時、肝臓から出すつもりで動かしましょう。体を伸縮させる時、胃も伸び縮みするように意識して下さい。手を前に出す時は、腎臓から背中、肩、腕を通して、動かしてみましょう。

 

このようにして体内を伸縮して全身の血流をよくし、体内の氣、波、力の感覚を得、重心を沈めます。

氣功を練習している方は是非、内部圧力を高める方法と、重心を沈める方法を習得していただきたいです。偏差(副作用)の予防になります。

 

三段目  要訣

 

8 歩行、腕ふり等の軽い運動をした後、全身リラックスして立ち、全身で運動の余韻を感じます。それから手をアサガオのつぼみが開くような形にします。すると手のひらにピリピリ、チリチリと氣の感覚が出てきます。また、腹内に充満感や圧力を感じてきます。手のひらを腹(丹田)の方に向けると尚、感じるでしょう。感じにくい場合は、また手をダラットさせてからやり直してください。手は夏みかんをつかむような形が感じやすいかもしれません。力まず、各関節はゆるめたまま、手腕は、静止でもよく、また自然に動きが出てきたら、それに乗って指・手首・肘・腕の角度をいろいろ変化させて、体内でどう感じるか観察してみて下さい。要は体内(丹田)にエネルギーが充実すれば良いのです。

腹内に充満感や圧力を感じる状態を保つようにします。そしてゆっくり歩いたり、ゆったり立ったり、座ったりします。筋力はほぼ使いません。こんな簡単なことが実は秘訣です。通りの良い体ほどわかりやすくなります。

 

手のひらをこすりあわせ、1センチほど離すと自分のエネルギーを感じます。それを膨らませたり縮めたりして、感覚を強めたら、手のひらをお腹に向け、ボールのような圧力を感じます。この状態を保つようにします。推手したり、手合わせしたりする時、このボールのような圧力、球体をキープすると、相手に攻め込まれにくくなります。争わずぶつからず、かわせます。また自分のエネルギーと共にある感覚があり安心感があります。

 

手のひらを腹(丹田)に向けるとエネルギー充電されます。その際、氣(磁力のような波のようなエネルギー)の感覚を楽しみます。最初は希薄な感じですが、だんだん質量感がでてきます。

やりこんでいくと、粘性、圧力を感じ始めます。腕を押されても動じなくなってきます。実際に力強くなってゆきます。さらに、掌から丹田に氣を送り続け、壺に水を満たすように、体幹に氣を満たします。

 

エネルギーが満ちる感覚を感じられたら、それを消耗させずにイメージで増幅させます。

手のひらをこすりあわせ、1センチほど離すと自分のエネルギーを感じます。それを膨らませたり縮めたりして感覚を強めたら、もう氣功の状態です。手の動きとあわせて体内も感じてください。膨らんだ時に体内に氣が満ち、縮んだ時には氣を圧縮するというふうにして体にエネルギーを充電、増幅しましょう。

 

立ち方を確認して前の空間を腕と体全体で受けたり返したりします。(押し手)

その際、空気の重さを感じるようにゆっくり行います。波や氣の感覚に、静かに圧力をかけます。細かい観察がポイントです。うまくやりこんでゆくと、体の細胞がクリームのような、密度が濃くなるような感じがします。丹念に行うと体にまとまり感が出てきます。

 

内臓(特に腎)が養われてくると軽く動けるようになります。これらの運動を少し圧をかけて、やりこむと、エネルギーが濃くなってくる感じがします。

この時に、肛門を絞め気味にして呼吸毎に丹田に氣を溜める感じで行います。

 

無意識に体を使っていれば、エネルギーは出ていく一方です。特に目から出ていくので、パソコン、スマホの見すぎには注意しましょう。個人的な感覚ですが、電磁波には生命力を奪われるような感じがあります。

スポーツ、仕事、勉強など、ほとんどの人間の活動はエネルギーを消耗していきます。エネルギーを回収できるものは少ないと思います。

 

肛門を少し絞め氣味にして、各関節はゆるめ、イメージで全身の穴(目、耳、口、毛穴等)を閉めます。

要は体内の観察をして、エネルギーが漏れ出ていかないか、疲れないか、充実していくかを感じて、体を作っていきます。これは瞑想や武術に役立つのみならず、生活全般、仕事や目標達成の推進力になるでしょう。

理想は健康な赤ん坊のように元氣に満ち溢れている状態です。

エネルギーが充実してくると氣持ちよくなり、些細なことは考えにくくなります。

目的を「エネルギーの円満」にすれば、おのずと行為の適量がわかるでしょう。

 

氣の練功法は、自身の氣を練り増幅させる方法と、天地や周囲の氣を取り込む方法があります。山海のパワースポットや神社、仏閣に行くのも同様の効果があるでしょう。ただ、せっかくパワースポットや人から良いエネルギーを得ても、自分にそのエネルギーを保持し、増幅する能力がなければ、すぐに消耗してしまうでしょう。ですので、私は体づくり、器づくりが大事と考えます。さらに、間脳、松果体を活性化して、天地や周囲の世界を感じる力を高めましょう。日常的にはなるべくスマホ、パソコンから離れ、外に行って太陽の光を浴び植物の緑を見ましょう。

 

9 物事に習熟するのには時間がかかります。内なる強い力を得るには、まず「通りのいい体づくり」をしましょう。今まで紹介したような運動を、氣持ち良さに乗って長く練習することです。時間をかけただけ効果が出てきます。そしてその効果は衰えにくいです。先人、老師達が証明してくれています。感じをつかんでしまえば一生ものです。多少休んでも衰えません。

 

真人は踵で呼吸するという言葉があります。イメージを少し使い、エネルギーが足裏から、地下数メートルへ、逆に地下から足を通って体内へ、次に反対の足から地下へ、これをゆっくり繰り返します。この感じでゆっくり歩いてもいいです。

人は皮膚呼吸により全身で呼吸しているはずですが、それを感じていません。これらの練習は、最初はイメージを少し使いますが、だんだんエネルギーの出入りが感じられるようになります。
体づくりは星の生成に似ています。ディスカバリー・チャンネルをご存じでしょうか。最新の科学情報を研究者たちが解説してくれるいいテレビ番組です。この宇宙の解説が実に素晴らしい。その中で、重力により周りのチリが集まり、星が形成するシーンがありました。それは丹田に氣が集まるのに似ています。だんだん、圧力感もでてきます。実際、体の密度が濃くなる感じがします。体の中心に星が形成される様です。

少しやってみましょう。少し運動して、体が温まったら、手のひらを丹田(へそ下3~9センチあたり)に向けます。掌と丹田の中にボールがあるとイメージして、腕をボールにのせているようにします。そしてなんとなくボールの圧力を感じるようにします。大体でいいのです。そのうちその感覚がリアルになってきます。

 

このようにして丹田、五臓(特に腎)を養い内力を引き出し、自分にエネルギーを充電し推進力を得ます。

 

おわりに

今まで紹介した運動の中で、効果を感じたものを気長に続けて、心・体の変化を楽しんでいただけたら幸いです。

この養生法は、派手さはないし、一見するとつまらなそうです。おそらく、今、健康で人生もうまくいっている人は関心を持たないでしょう。しかし心身両面に良い効果がありますし内部感覚をうまくつかむと、これほど面白く深い世界はありません。瞑想の世界にも通じます。かつての私のように人間関係に悩んだり、体の弱い方々にとって何らかのお役にたてれば嬉しいです。日本再生の一助になれば幸いです。

 

仕事や生活の中で達人になりましょう。陽明学でいうところの事上磨練です。平常心を保つのが大事です。ポイントは禅だと思っています。座禅、立禅(たんとう)、歩行禅。

人間の体は皮袋に水が70パーセント。その中に脳、骨、内臓が浮いている状態です。体内の緊張が無い状態。それを意識するだけで、禅の状態に近くなります。体内、浮いて、大海を漂うクラゲのように、流れに沿って仕事をする。

生活中ではゴミ捨て、トイレ掃除等をきちんとして、体は食事、運動等で血流、排便をよくして、環境を整え、周囲の人が心地いいようにする等です。これらを行うことで、精神的な疲れ、緊張は減り、世界の応援を得られるのではないかと思います。

起きている間の身心観察「今、ここ」、拳拳服膺、平常心、良知を致す。

 

一は、精、氣、原初のエネルギー。現代は変化、多様、展開の時代で、一はどんどん薄くなり、病気、アンバランス、摩擦を生んでいます。一に向かえば、いろいろなことが自然に解決されると思うのです。

 

私は武術の練習を通じて腹(丹田)に、氣(エネルギー)が満ちるのを感じるようになり、老師方が語っていた仙人の存在を信じられるようになりました。エネルギー体をしっかり作り不老長寿になるだけでなく、人間の可能性は、もっともっともっとある。意識的にも、肉体的にも。ですので、これに親しみ楽しむことを、お勧めいたします。今までの悩みが薄らいでいくでしょう。それだけでなく、いろいろなことに氣づいたり、もっと大いなるものを感じるでしょう。

 

追記

私は楳本法神(群馬県勢多郡北橘村箱田にある木曽三柱神社の法神流剣法伝統碑によれば168歳で没したとある。相手の頭上を飛びこえる天狗のような達人。農民の治療もしていた)、寺田宗有、白井亨、中村一心斎(富士山にこもり開眼。農業指導もしていた)といった剣の達人を尊敬しております。  白井亨は勝海舟の氷川清話に登場しています。残念ながらその流派は失伝しています。 江戸時代、多くの剣豪は参禅していました。

天真一刀流の寺田宗有や白井亨は白隠の伝えた内観法や練丹を重視していました。白隠は白幽子という仙人からその方法を教わりました。つまり彼らの行った禅はただの瞑想ではなく、練丹してエネルギー的な体作りをしていたと確信しています。ですから圧倒的に強かったのでしょう。

 

寺田宗有の言葉

「壮より八旬に至る迄練丹自強する事、夙夜懈る事なく、終に一旦豁然として見性得悟の大事を究め、仏祖不伝の妙、其天真に貫通することを得たり」

 

現在ほとんどの武道各流派は立ち方三年歩き方三年といった地味な稽古や丹田を重視しなくなりましたが、私が習った伝統武術の稽古では自然に丹田や足腰が練れました。

私は江戸時代の氣風が今の日本に蘇ればいいなぁと思っています。

 

 

経緯2

高校時代は、とにかくきついクラブがいいとサッカー部に入部しましたが、ボールより地面や木の根を蹴飛ばし捻挫しまくり、両足首・両膝・両股関節すべて痛め、いつもどこかが痛む状況で、階段は手すりを使わないと登れず、道路の微妙な傾斜も気になるほどでした。このような具合で、2年生の時は半年以上練習に参加できませんでした。この時、整形外科や整骨院に通院しても、少しも良くならなかったのが後に鍼灸師になった理由の一つです。

この間サッカーはできませんでしたが、毎日グランドへ出て上半身の筋トレをしていました。半年位たって、足の痛みが薄らいできてから少しずつメディスンボール(砂の入ったボール)を蹴りはじめました。蹴るというよりはむしろ「押す」ことにしたのです。そうしているうち普通のサッカボールが軽く感じられるようになり、普通にボールを蹴ったり走ったりできるようになりました。高3になってからは空手を始め、砂袋や木・タイヤ・電信柱を蹴る、というよりは、押すという感じで足のすねを鍛えましたら、その後は怪我をしなくなりました。接触プレーも恐くなくなり、むしろぶつかってきた相手の方が倒れるようになりました。この当時、1977年頃はリハビリという概念は、まだ世間的ではありませんでした。後にリハビリ病院に勤めた時に、自分は自然にリハビリのトレーニングをしていたのだと気づきました。

高校3年~20歳まで空手を習いました。最初の頃、いろいろな技が出来るようになっても、恐がりで相手の周りをぐるぐる回るような組み手しか出来ませんでした。組み手の際、普通は「まいりました」と言えば手を止めてくれるのですが、「まいりました」と言った後で10発位、突き蹴りをしないと止めない先輩がいました。そのおかげで、どうせ殴られるならばと、前を向いて耐えたり、微妙に体を左右に動かしてかわし、自分から一突き入れられるようになりました。この頃から、私は逃げ回らなくなりました。しかし、私の体は突き蹴りによるダメージを受けてしまいました。体格差、体重差を痛感したものです。

 

昭和57年4月~昭和59年7月 建設現場:体作りが大事と思い、肉体労働をしました。

昭和59年8月~昭和63年7月 コンピュータープログラマー:無性に頭を使いたくなり、コンピューターのプログラマーになりました。仕事はダムや道路の水防管理システムでした。ダムのゲート放流量の算出や、ロボットのプログラム中にサイン、コサイン、タンジェント等の数学の知識が必要でしたから、数学を真面目にやっていればよかったと思いました。高校の数学の先生には「将来こういうところで必要になるよ」ということを教えていただきたかったです。

4年ほどたつと、長時間労働により、体の不具合を感じ、体を鍛えなおそうと、キックボクシングのジムに通いました。会長、タイ人のトレーナーの指導がうまく、すぐに、カウンターの突きけりが出来るようになりました。これで、体による攻防が出来るようになりました。自信もつきました。ですが、身長差、体重差による不利。また、年齢を重ねると出来ないなどの課題がありました。

 

アジア放浪 27歳~ 昭和63年(1988)12月~平成3年(1991)7月

インド、タイ、スリランカ、中国、フィリピン、約2年半滞在。

インドでは、ヨガ自然療法病院に3ヶ月半滞在。チベット亡命政府があるダラムサラに1ヵ月半滞在。ダライラマと握手できました。スリランカで1ヶ月、鍼の講習を受けました。中国では、太極拳の推手を見ました。若い女の子や老人が若い男の人に勝つところを見て、興味を持ち習い始めました。気功も習いました。この時、潰瘍性大腸炎の友人は、気功治療を2ヶ月半受け、日本に帰ってからも再発していません。その後、北京で気功の講習を受け、その時のメンバー5人で、四川省峨眉山とチベットに行きました。この時のさまざまな経験で、ロジカルな思考パターンが180度変わり、精神的世界もありかなと思うようになりました。峨眉山で、らせん状の雲や、薄紫色の帯が地上から空へ立ち上がっているのを見ました。フィリピンでは、8ヶ月スピリチュアルヒーラーのもとに通いました。ヒーラーはオイルマッサージ、鍼、サイキックサージェリー、占い、人生相談、エクソシスト、警察からの以来等、お客の状況にあわせて、何でもやっていました。

 

平成4年4月~平成7年3月鍼灸学校(熱海)

熱海や箱根のホテルでマッサージの仕事をしながら、鍼灸学校に通いました。このころカルロス・カスタネダの「沈黙の力」を読み感銘しました。その後、いろいろな精神世界の本を読みましたが、仏教、道教の古典とカスタネダの著作が私のバイブルになりました。この頃、居合いを習いました。腹(丹田)から刀を抜き、振り、納刀する気持ちの良い時間でした。

また、先輩に勧められて中国武術を習いました。最初は運動不足解消程度にと始めたのですが、今に至るまで影響を受けるとは思っていませんでした。先生は私よりも若く、練習も表演用の練習なので、空手やキックボクシングを経験していた私は、軽く考えていました。実は先生は中国に留学する前に台湾の伝統武術も修行されていました。そして正月休みに先生に台湾に連れていっていただき、そこで本物のすごさを体感しました。先生の師は少林寺の僧5人の位牌を受け継ぐ人でした。一呼吸の間に何度切り刻まれるかわからない感じで、剣を扱い、九節鞭は足裏で止め、飛ばす技を見せていただきました。九節鞭は手裏剣に鎖がついているような武器です。動きは軽やかで、あっという間に裏をとられてしまいました。武術というより忍術のようでした。「これはあっという間にやられる。」と思い、自分の能力の限界を感じ、武術をやめようと思ったのですが、先生になだめられ、30~60代からでも出来るものがあるからと、最初に習ったのが形意拳でした。この形意拳は太極拳や八卦掌と共に内家拳といい、体の中から力を導く、道教(仙道)の気の訓練法が入っています。そこから私の武術遍歴が始まりました。

当時、先生のお宅に伺っては、ご馳走になり貴重な話や映像を見せていただきました。

 

30代から、夢想神伝流居合、形意拳、太極拳、大東流合気柔術3年、意拳9年、先生方に指導を受け、気功、八極拳、八卦掌は短期で習いました。

立禅(意拳)の練習を始めた頃、夜、公園で練習したのですが、冬は顔や手が冷たいし、夏は蚊に食われるし、肩は凝ってくるし、こんなんでいいのだろうかと、よく思っていました。4年くらいしてようやく練習の要領がわかってきました。今は実に素晴らしい訓練法と思っています。

練習が終わると、先生や仲間と食事に行き、お酒も飲んで、先生にぶしつけな質問もしていました。先生も独り身だったので、気軽に答えてくれました。また先輩方から多くのヒントやコツを教わりました。それで理解が進みました。楽しい時代でした。私が先生に「このようにきたら、どのように対処しますか。」と聞くと、笑って、面倒くさそうに「人間は手が2本、足が2本ですね。」と答えてくれたのが印象に残っています。先生は著名な武術家や団体、選手等と交流があり、貴重な話をたくさん聞くことが出来ました。

 

大東流合気柔術の先生は95歳まで生き、最後まで頭脳明晰で、その技は素晴らしく、今でも私の理解をはるかに超えています。先生は明治生まれで、先生の師は会津の武士です。幕末から明治の気風を髣髴させる人でした。眼光が凄く、龍の目という感じでした。厳しい先生で、人をほめることはほとんどありませんでしたが全員の練習を見てくれていました。印象深いのは上位の黒帯の先輩が後輩に指導している時、「君、その人にそんなに激しくやってはいけない、前の若者には、その指導のしかたでよいが、その人の年齢を考えて前の日まで、どういう生活をしていたか感じないといけない。」と注意した時、先生の観察力の鋭さや優しさを感じました。この道場で柔道着が汗でびっしょりになるまで押さえたり投げられたりしているうち、半年もしたら重心が沈んで力の抜けた体になっていました。ここの練習は思いきり力を入れて押さえてくるのを、力を入れずに持ち上げる練習が基本でした。先生が亡くなった時、骨が立派で骨壷に入りきらなかったそうです。当時、私は病院勤めをしていて、薬を多く摂取した人の骨は焼くとぼろぼろになると聞いていましたので、この違いは何なんだろうと思っていました。今、私は「骨と脳神経は生きている間は衰えない」と確信しています。どのように毎日を過ごすか、何を食べ何を考え、どのように体を扱ったかで決まると思います。

 

追記2

以前、10日間瞑想合宿での8日目にちょっとしたサマーディ体験をしました。いつも見ている室内なのにみずみずしい。水晶の中にいるような。そして360度、周囲を感知している。小さな喜びが連続している。他に何もいらない。このままで幸福。という感じでした。

思うに、私たちは、この体があれば、すでに満ち足りているはずなのです。それが常に、外に意識を向けさせられています。仕事、人間関係、社会不安、テレビ、パソコン、スマホの情報等。本来の人間の可能性に気づかないようにさせられているように感じます。

 

漢方、鍼灸、易、風水等、大本は仙道(養生)です。

漢方は口から摂取し、鍼灸は体表に刺激を入れ、体を調えます。練丹養生法はダイレクトに体の中心(丹田)を養い強化します。そして、人と自然をつなぐ道。円満へ至る道です。

私たちの体も、中心、丹田ができ、密度が高くなると、体の大小、高低、年齢に関係なく、力強く、丈夫になります。石炭(炭素)を、高圧、高密度にするとダイヤモンドになるように。

 

 

 

引用文献

ウィキペディア 楳本法神、寺田宗有

白隠禅師-健康法と逸話 直木公彦 日本教文社

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