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水と生命

生命とは何か? 50 中国人と水

第一節 『中国人と水』
中国の生命観で述べたが、中国には気の思想というものがあり、また陰陽・五行論がある。戦国末から秦漢時代にかけて、この思想は発展していく。その中の五行説に、水が出てくる。「水火木金土」という、世界を構成する五つの素材のことであり、五行説はそれにもとづいて世界構造を統一的に、説明しようとする理論である。
『管子』(水地篇)中国の戦国末期から漢時代にかけて編纂された。
水とは何ぞや。万物の本源なり。諸生の宗室なり。美悪・腎不肖・愚俊の産まるところなり。
人は水なり。男女、精気を合し、水、形を流く。(56)
『太平御覧』巻五十八所引『春秋元命包』(宋 代初期に成立した類書 977年 ~983年 頃)
二人の人が交わり、「一」がそのなかから出てくるのが水である。一は、数の始まりであり、二人は男女にたとえる。つまり陰陽が交わる万物は一から起こることを意味する。(57)
『太一生水』 郭店楚簡(1993年に湖北省荊門市郭店村(かくてんそん)で発見された)
太一は水を生ず。水は反りて太一を輔く。ここをもって天を成す。天は反りて太一を輔け、ここをもって地を成す。…この故に太一は水に蔵し、時に行る。
水は、万物を構成する根本となるものであり、「諸生の宗室なり」とは、水があらゆる生命のあるものの源であることを言っている。また、人間の身体が水から成ると明確に述べられている。「太一」とは、宇宙生成の根源者と考えられており、水は一であり物質的根源であり、水を物質的根源者とする思想がある。(56)
『服気精義論』 道教
水を「気の母」という。
『元気論』
口中の水は、満ちれば「醴泉」、集まれば「華池」、散れば「津液」、降れば「甘露」…これを漱いで飲むと、臓器に注がれて身を潤し、百脈を流通させ、体内の万神が養われる」(57)
このように中国では、水とは物質的根源とする思想が脈々と続いており、生命の源であるとし、不老不死を願う中国の人には、身体の中の水というものを養っていくことの大切さをいう書物も多い。水を命の根源と明らかにしており、その水を発展させ、道教や儒教や医療に展開させいる。陰陽五経思想では、水は腎であり先天の精といい、生命の根源として私たち鍼灸師も大切にする。腎が弱ることは、その人の生命エネルギーが弱っていることとなり、腎をとても重んじる。中国は、水から世界観を人の身体にまで繁栄し、その法則を取り入れている。そしてよりよく生きること、人類が求めて止まない不死をも見据え、世界の法則(この世の法則)を実践に活かしていると改め感動させられる。
中国人と水の関係は、本当に親密であり、情緒的なものだけでなく、水を生命の根源としその法則を使い、自分たちに活かすというするどい感性をもっていることがわかる。そして日本もその恩恵を受けている。

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