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水と生命

生命とは何か? 41 水の性質2

第一節 『分子レベルでみた気体・液体・個体』

水は常温では液体であり、熱すると水蒸気(気体)となり、0℃以下に冷やすと氷(個体)に変化する。水は、温度や気圧などにより常に流動しており、固有の形をもっていない。そのため、水の性質をかたるとき、気体・液体・個体で見ていかなければならない。気体・液体・個体の性質をミクロな立場からみていく。
気体分子は、ものすごい速さで空中をいろんな方向に飛び回っている。物質の性質を示す場合、温度と気圧を決めておく必要がある。25℃1気圧の時、気体分子は、1秒間に数百メートルの速度で動いている。秒速ではわかりにくので時速にして表すと、酸素分子は、速度1595キロメートルで、いちばん軽い水素分子は時速6365キロメートルの速度をもっている。水素分子の速度は、ライフル銃から飛び出す弾丸の速度と同じぐらいである。この分子運動のエネルギーは、分子を取り巻くまわりからから熱エネルギーを得ているが、実際は動くとすぐに他の分子と衝突して進路を変えており、そのため一方向に移動する速さは、分子の実際の速さに比べると非常に遅いことになる。1気圧の常温で、気体1立方センチメートル内の分子の衝突の数は、1秒間に1023という莫大な値となる。
気体と液体中の分子間距離すなわち隙間の広さで見てみると、18立方センチメートルの水を熱して水蒸気にすると、1気圧で体積は100倍に増え、分子間距離は水蒸気の方が10倍ほど大きいことになる。液体の中でも分子が同じように速い運動をしているならば、液体の方が分子の衝突数がもっと大きくなり、衝突の間に動く距離はもっと短くなる。
実際に液体中の分子速度を測定すると、気体の速度の約1/10の速度で運動している。水(液体)は、時速約190キロメートルの新幹線なみの速さである。(数オングストロ-ム(Å)動くと他の分子にぶつかってしまう。1Åは1億分の1センチメートル)これは、狭い部屋の中でかなりのスピードをもったものを想像すると、理解しやすい。激しくぶつかりあっており、水のエネルギーの凄さに感嘆してしまう。水分子の熱運動がきわめて激しく、ある瞬間の水の構造が保たれているのは、10-12秒程度の非常に短い時間であり、水はダイナミックに動いている。これは、水が静止していても流れていてもかわらない。
気体・液体・固体いずれの場合にしても、分子はある速さで運動しているが、「水は方円の器に従う」という諺にもあるように、気体も液体も自分自身の形態を保つことはできない。一方個体はこわさない限り自分自身の形を保っている。このような違いは何によるものかを見ていかなければならない。個体になるとは、分子間に力が働いていることになる。力の一つとして、ニュートンが考えたといわれている万有引力があるが、分子レベルで考える時は、下記に述べるファン・デル・ワールス力などと比べると小さいため、万有引力については、除いて考えていく。私は、化学を研究しているのではないので、簡単に必要なことだけを述べていく。
水分子は、分子の中で正の電荷と負の電荷に分かれている。このような分子を有極性分子といい、水分子が手をつなぐとき、双極子を持つことになる。双極子とは、短い棒の両端にそれぞれ正の電気と負の電気を帯びている物質を双極子と呼ぶ。この正負は電気の絶対値は等しいため、分子全体としては電気的に中性である。この双極子は、磁石を考えるとわかりやすい。同じ極同士は反発し、N極とS極はお互い引きつけ合うような力が働く。これはわかりやすいが、メタンのような正負の電荷が分かれていない無極性分子も-184℃まで冷やすと個体になることから、メタン分子の間にもごく弱い力が働いているということになる。
1873年オランダの物理学者ファン・デル・ワールスが、すべての分子は、お互いにひきあっていると仮定し、量子力学的にロンドンが説明し、1951年にその引力の測定に成功することによって、その引力が証明された。それをロンドン-ファン・デル・ワールス力という。
下記でも述べるが、水分子は、イオンによる電気的な力(クローン力:クローン力にも、引きつけ合うクローンの引力と同じイオン同士が反発するクローンの反発力が働いている)と水素結合とロンドン-ファン・デル・ワールス力などの力が働いている。
すべての物質は引力と反発力をもっている。ある二つの分子の組を考えると、その間には反発力と引力が働いていることがわかる。この二種類の力が分子距離とともにどのように変化するか示すポテンシャル曲線という。上記で述べた引力が強ければ、その曲線の谷の深さも比例する。そこで、もう一度個体というものを考えてみると、固体では、分子間の距離が液体に比べて小さい。お互いの分子間の力が強く働いて、深いポテンシャル曲線ができる。液体のように自由に動きまわることができないのである。

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