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水と生命

生命とは何か? 31 スーパーポジション

私たちは、物質は原子という小さい粒が集まって構成されていることを知っているが、この考えは、ギリシアの哲学者デモクリスト(紀元前460頃~370頃)が、物質を構成する究極の微粒子を想定して「分割できないもの」という意味の名前でアトム(atomos)と付けたことに由来するが、原子の概念が近代科学で導入されたのは、19世紀の初めであり、イギリスの化学者ドルトン(1766~1844)が原子説を唱え、その大きさは、およそ1ミリメートルの1000万分の1。19世紀終わり1897年イギリスの物理学者トムソン(1856~1940)には、電子が発見され電子が原子に含まれていることがわかり、分割されないもの=原子ではなくなった。1911年イギリスの物理学者ラザフォード(1871~1937)が原子モデルを提唱し、プラスの電気を帯びた原子の中心部分に集中していて、その周囲を電子が回っているものとした。これは、太陽の周囲を惑星が回っている様子にている。
しかしこれでは、原子はつぶれてしまう。電子は回転運動をすると電磁波を放ってエネルギーを失い、原子が一瞬にしてつぶれてします。それをニールス・ボーア(1885~1962)が、①電子は決められた円軌道上だけを動いている。そして、ある条件に合うとびとびの値だけに限られる②この軌道上を回転運動をしているときには、電子は電磁波を出さない③電子が別の軌道に移るとき、電子は電磁波を放出したり吸収したりする、エネルギーの差は光を放つ。これが蛍光灯や夜光塗料が発する光となる『ボーアの原子模型』は、私たちの身の回りのものを創り出した。原子の構造にも、プランクが出した量子の考えが、なくてはならないものになる。上記にでたド・ブロイの波の考えが、このボーアの原子模型をしっかりと説明することとなる。電子の波が原子核の周囲を回っている。波はある一点に存在するのではなく、原子核の周囲に広がって存在する。ボーアの電子がとびとびのある条件の場所で回っている(ボーアの量子条件の式)を根拠を説明した。ド・ブロイは、電子の正体は波であるが、見かけ上は粒子をしての性質を示すのではないかと考えていた。
1926年オーストリアの物理学者シュレーディンガー(1887~1961)が物質波の伝わり方を計算する方程式を発表する。この方程式を解けば、物質がどんな「形」の波を持ち、その波が時間の経過とともにどのように伝わっていくのかが計算できる。水素原子中の電子のエネルギーがボーアの量子条件のとおり「とびとび」になっていることを示した。(波動力学と言われるものができていく、ミクロの世界の運動法則を記述するものを量子力学となっていく)しかし、実際にどんな波になっているのかは、まだ理解されていなかった。
電子の波は「神様が振るサイコロ」だといい、これを「波動関数の確立解釈」と呼ぶ。この解釈と唱えたのが、ドイツの物理学者ボルン(1882~1970)で、一個の電子を粒と波でとして考えると、波である電子は箱の中で広がりを持って存在していることになる。この箱に中に仕切り板を入れて、箱の内部を二つの空間に分けると電子の波も分けられることになるが、私たちはどちらかに1個の電子をみることになる。この場合、「割れている」ものは、電子が左右どちらからの空間で発見されるかの「確率」である。そして、電子の波の性質は、私たち知っている他の波の性質とはまったく異なっていることを示す。私たちは、常に「1個の完全な電子」をみるからである。研究が進み電子の不思議な状況がどんどん出てくるようになる。
「我々が電子を観測すると、電子の波は収縮をする」「我々がみていないときだけ、電子は波のように広がっている」と考えた。そして、電子は「重ね合わせ」の状態であると見なされる。電子はA点やB点の場所にいる状態が重なり合っており、誰かが観測すると何処かで観測されるのである。これを英語ではsuperpositionと言う。電子の波が広がっているとき、電子は通常の位置(ポジション)を概念を超えた「スーパーポジション」を占めていることになる。ボーアたちは、電子の位置は、まるでサイコロを振ってその目に応じて電子の発見場所が決まるように、確率的に(いわば偶然の要素で)決定されるのだと考えた。電子は、私たちが観測をやめると、電子の波は再び広がり「重ね合わせ」の状態に戻っていく。しかし再度電子を観測するとどこか1点で観測される。これをコペンハーゲン解釈という。この解釈には、アインシュタインやニュートン以来の物理学者の「決定論」者は、理解できず反対の対応をとっていく。アインシュタインの「神はサイコロ遊びを好まない」という有名な言葉になっているが、量子論を批判した言葉である。しかし、電子などのミクロの世界は、量子論を認めざるえない状況になっていく。

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